たんぽぽにとって、食べたくてももう食べられないもの…のひとつに「クリタケを使ったお煮かけ」がある。
クリタケってのは山に生えているきのこで、香りや味が大好き。
お煮かけは信州の郷土料理で、そばバージョンとうどんバージョンがあり、たんぽぽ家ではもっぱらうどんだった。
昔々、忙しい農家の皆さんがいろりの大鍋に具沢山のおつゆを作っておいて、手が空いた者がそこにうどんを入れて食べたものらしい。
うどんは予め茹でて小分けにしてあり、それをとうじかごに入れておつゆの中で振り振りしてお椀にとって食べる。
おつゆをごくごく飲むうどんではなくて、うどんと具材を楽しむ。多分おつゆは次に食べる人のために残していたんじゃないかなぁ。
たんぽぽの子供時代は既に農作業やお蚕さんの世話に追われる時代ではなくなっていて、家族みんなで食卓を囲んでいた。アルマイトの大鍋に作ったたっぷりのおつゆに、母がとうじかごを入れて、一人分ずつのうどんを取り分けてくれた。
一度に作る量は少なくて、何杯もおかわりをして食べる。
毎秋父が山に入って採ってきたクリタケを小分けにして冷凍してあり、帰省するたびにねだって作ってもらっていたんだけど、父が逝ってしまい我が家のクリタケストックもなくなった。
お煮かけのうどんは母が地粉を捏ね、手動の製麺機をキコキコ回して作っていたんだけど、そろそろそんなことを頼めない年齢になってきた。
思い出のお煮かけは思い出の中だけのものなんだけど、食いしん坊のたんぽぽはなんとかそれに近いものが食べられないか?と考える。
ネットで原木栽培のクリタケを見つけたので取り寄せてみた。
日付指定はできないし(10日以上待った)、クール便の配送料はそこそこするし…と悩んだけど、山に入って採って来るなんてできないしなぁ…と思ってポチ。
使ったうどんは、常備している冷凍さぬきうどんだし、とうじかごなんて使わずに丼に1食分つゆごと入れちゃったんだけど、かなり美味しい。
母の味を思い出しながら、刻んだ豚肉、ちくわ、油揚げ、ナス、大根、にんじん、さやごとの枝豆なんぞ入れてみた。
原木栽培のクリタケは山で採ってきたものと同じとは言えないけど、香りも味もかなり近くて、これはクリタケ!って納得できる。
今度は炊き込みごはん作らないと。